ネパールはインドと同様にカースト制度がありました。
現在のネパールが建国される以前の、ヒンドゥー教支配者によって持ち込まれたものです。
ダリットは、カーストの最下層の人たちです。
今回はネパールのカーストの最下層、ダリットを取り上げます。
ネパールのカーストの最下層:ダリットは不可触民?
ダリットは、カーストの最下層ではありません。
カーストの制度以下の人たちです。
人類の歴史は、差別の歴史です。
支配者は民衆を階級に選別することにより、自分たちの優位性を正当化していました。
世界中、それは変わりません。
ネパールも例外ではありません。
ダリットはカースト制度外の「不可触民」の中の最下層と位置付けられています。
ダリットが最下層と位置付けられた法律では、
「奴隷化可能な不可触民」の最低カーストと規定されていました。
これは19世紀中ごろに公的にカースト制度が導入されたときに、定められました。
もともとダリットという意味は「抑圧されたもの」「壊されたもの」というものです。
1990年代にインドで始まった「不可触民解放運動」の時に使われ始めました。
ですから、周りの人たちが使う呼び名というよりは、
自分たちのことを表現する言葉として使っています。
依然として色濃く残るネパールのカースト制度と差別社会
現在のネパールは、多民族社会でありながら、差別のない社会を目指しています。
インドの影響を色濃く受けたネパールは、
王政から民主化運動を経て今は連邦共和国になっています。
この連邦共和国制の下、それぞれのカーストや民族が緩やかに
連携する社会を構築しようとしています。
具体的には、カーストや民族の違いによる差別を
政治的問題ととらえて、乗り越える努力を行っています。
憲法では民族の融和をうたい、共存を目指しています。
しかし、人々の心の中はまだ、変わりません。
依然として、ヒンドゥー教のカースト制度は残っています。
驚くべきことに、政府も何もしていません。
ネパールのカースト制度について、詳しくはこちらをご覧ください↓
ダリットの子どもが学校に通うときに、
教科書の無償配布が一般の子どもより、2年間長いだけです。
何かダリットが被害を受ける事案があっても、誰も支援しません。
被害を受けたダリットが訴え出ることもありません。
報復にあわないように、これ以上つらい目に合わないように、
声をあげることを決してしません。
黙っている、それだけです。
ネパールのダリットの現実:カーストの最下層以下の扱い
ダリットの現実は、差別による被害だけではありません。
男性も女性も暴行被害を受けます。
そして貧困が原因の人身売買があります。
特に女性は、人身売買同然の児童婚の風習もあります。
10代前半の女の子が結婚させられるのです。
日本であれば中学生になったばかりの年齢で、結婚させられるのです。
人身売買も行き着く先は売春宿。
この他にも、差別は根深いものがあります。
カーストによる差別や、ヒンドゥー教の家父長制による差別の他に、
同じダリット男性からの差別があります。
売春宿にいても、事実婚のような生活になることもしばしばあります。
ダリットの男性と家族同様の生活をおくっていても、結婚はありません。
こんな時、ダリット男性は他の女性と結婚します。
異なるカーストの女性と結婚して、ダリットではなくなるのです。
ダリットもカトマンズの「クマリ」も同じネパール人女性
ネパールを語る時、必ず「クマリ」の存在が出てきます。
カトマンズ盆地の生き神様「クマリ」として、選ばれた幼い女の子を崇めます。
カトマンズ盆地のお祭りでは「クマリ」は山車に乗って民衆を祝福します。
カトマンズの家庭でも幼い女の子は実の父親からも「クマリ」同様の扱いを受けます。
生き神様の「クマリ」に選ばれる女の子は仏教の信者の民族から選ばれます。
一方ヒンドゥー教のダリットは、差別の対象です。
同じネパール人の女性でありながら、置かれた境遇はあまりにもかけ離れています。
今日では、人権活動団体の支援を受けて、
ヒンドゥー教からキリスト教にかわるダリットの女性もいます。
でも、それだけ。
他は何も変わらないままです。
ネパールのカーストの最下層以下:ダリットの哀しき貧困のスパイラル
ダリットの女性の80%は読み書きができないといわれています。
ネパールは多民族社会ゆえ、公用語がネパール語と定められています。
しかし、それぞれの民族を重んじるあまり、
小学校に入学した時に、ネパール語が理解できない子どももいます。
就学率は、小学校で97%です。
3%の子どもが入学していません。
これは戸籍のある子どもたちの統計です。
両親が正式な結婚をしていない子どもは、父親に認知されることはありません。
前にお話ししたように、ダリットの女性は正式な結婚をしていません。
そして、ネパールの法律では、父親の名前がないと子どもの出生登録は困難です。
つまり、ダリットの多くの子どもは戸籍がないのです。
この子どもたちは、最初からカウント
されていないので小学校に入学することはできません。
ダリットは生まれながらに、社会からこぼれ落ちています。
変わり始めたダリット(ネパールのカーストの最下層以下)女性司祭誕生、議員に立候補も
2000年代に入り、少しずつダリットは変わり始めました。
1990年代から国際連合による女性の暴力被害からの解放運動と相まって、
ネパールのダリットの女性の抱える多くの問題に注目が集まるようになりました。
人権活動家や女性の支援活動を行う団体によって、
多くの支援が寄せられるようになりました。
現在では、カトマンズ近郊に女性の司祭も誕生しました。
また、議員選挙に立候補するダリットも現れました。
残念ながらそれ以上の支援を広げることはできず
落選してしまいましたが、大きな前進と言えます。
変化の波がネパール全土に広がるためには時間が必要です。
まだ、地方でのダリットに対する差別は根深いものがあります。
今の自分の生活に対する不満をダリットに暴行を加えることで
解消している人がいることも忘れてはなりません。
全ての人々が笑顔で暮らせるようになるためには、まだ多くの時間と支援が必要です。
ネパールのカーストの最下層以下(ダリット):まとめ
ダリットは世界に2億人、そのうち1億7千万人がインドに暮らしているとされています。
少しずつ、ネパールのダリットにも光が当たるようになりました。
本当に極わずかな、微々たる光です。
世界中が目を背けず、ほんの少しでも関心を持つことで夜明けが近づきます。
ネパールのカースト制度と階級!苗字や名前・職業との関係!廃止は?
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