カースト制度は、インドでについてよく見聞きする言葉ではないでしょうか。
しかし、近年日本でも「スクールカースト」という言葉が出てきました。
私は、学校以外でも日本社会は学歴や貧富の差、社会的地位の高低などによって何となくカーストが出来上がっているように感じます。
今回はネパールにおけるカースト制度(ネパール語のジャート)や階級、苗字や名前・職業、恋愛との関係・カースト制度は廃止されないのかなどについて詳しく説明していきます。
ネパールのカースト制度と階級
ネパールのカースト制度はもともと3種類存在していましたが、現在ではそれらが統合され、1つのカースト制度が存在しているといわれています。
先ほども少し触れましたが、日本では暗黙の了解で貧富の差や社会的地位などによって階層が分かれているように感じます。
しかし、ネパールのカースト制度は身分の上下と貧富が比例しない点に特徴があります。
・・・と、言われているだけなんですよね。実際には、カーストや民族によって上下関係・階級があったり、就ける職業が変わったりします。
それについては後ほど、お話します。
ネパールのカーストは全部で5つの身分に分かれるといわれていますが、それぞれ詳しく見ていきましょう。
タガダリ
これは、神聖な紐を帯びる者という意味です。
ネパールのカースト制度で最も上に君臨する身分です。
神聖な紐とは、綿で作られた糸のことをさし、これを身に着けることで一人前のヒンドゥー教徒である証とされていました。
地位も一番上とされており、お酒を飲むことは禁じられています。
タガダリに属するのが、バウン(ブラーマン)、チェトリ、ネワールといったカテゴリーです。
ちなみに僕は、ネワールです。
バウン(ブラーマン)
バウン、あるいはブラーマンは、ネパールのカーストの最上級階級の民族で、司祭カーストです。
そのせいからか、賢く、頭が良いと思われています。
また、ブラーマンの男性は成人式(バルタマン)をしてからは、ジャナイと呼ばれる聖なる糸を服の下、体にずっとつけるようになります。
ちなみにネパールの成人式って、日本のように皆一斉に20歳の時に行うわけではないんですよ。
また、ネパール人の8割はヒンドゥー教徒なので牛肉を食べませんが、
ブラーマンのネパール人のうち一部の人たちはベジタリアンなので、牛肉だけでなくお肉全般食べません。
チェトリ
チェトリもブラーマンと同じくらい上の階層で、慣習などもほぼ同じですが、違うのが苗字です。
後述するようにカーストや階層によって名字が違いますが、チェトリの人々と、ブラーマンの人々の苗字は異なります。
ネワール
うちのネパール人夫が、ネワール族です。
と言っても、ネワールの中でも高いカーストと低いカーストといったように、階層はあります。
ネワールには、ネパール語とは別に自分たちの言語、ネワール語があります。これが、他のカーストと違う特徴と言えます。
うちの夫は、学校では英語(私立の学校は、全授業が英語で実施されます)、友人とはネパール語、家族の間ではネワール語、と幼い時から多言語を駆使していたのです(!)
ちなみに、その他にもインド語、更に今では日本語も話せるようになっているわけですから、5言語も話せるマルチリンガルなんです。(考えてみれば、すごい・・・)
2.3.マトワリ
ネパールのカースト制度における第2、第3位の序列に値するのがマトワリと呼ばれる人たちです。
マトワリはタガダリと異なり、酒を飲んでも良いとされています。
第2位のマトワリと第3位のマトワリの違いは「奴隷にされるかどうか」という点にあります。
察しがつくかもしれませんが、身分の低いほうは奴隷にしてもよいとされています。
とはいえ、生活水準はほとんど変わりません。
ネパールで最も庶民的な生活をしているといわれています。
4.5.パニナチャルネ
これは、不浄のカーストとされている身分です。
他の身分の人と同じ水を共有することは、許されていなかったといわれています。
つまり、同じ井戸の水を使うことができないので、生活には非常に苦労したことが推測されます。
酷い話ですが、万が一同じ井戸水を使ってしまった際にはリンチにあうこともあったそうです。
また、労働者という扱いよりは完全に奴隷扱いをされており、法律を学ぶことさえ禁じられていました。
第4位と第5位の違いは「触れられるかどうか」という点にあります。
最下層だとされる第5位のパニナチャルネは不可触民と呼ばれ、
誰からも触れられてはならず、自らも触れてはならない存在だとされていました。
生活面においても平等な市民としての権利を与えられず、かなりひどい生活を送っていたそうです。
ただし、これらは昔の話ですので、今はそれほど酷い扱いではありません。
現在では靴屋さん、服屋さん、肉屋さんなどとして働いている人が多いです。
不可触民と呼ばれている人たちとして、ダリットと呼ばれる人たちもいます↓
カースト制度は廃止しているとはいえ、まだこのような意識がネパール人の間にもある、
というのは日本人にとって衝撃的だと感じる人もいるのではないでしょうか?
ネパールのカースト制度と苗字・名前の関係
上では、カースト制度におけるそれぞれの身分・階級について説明してきました。
誰がどのような基準でどの階級に所属するかは、民族や人種、そしてその苗字によって決定されるといわれています。
ネパールは多民族社会であるため、様々な民族の人たちが同じ地で生活しています。
そのため、ネパールでは民族語の言語をもとにしたその民族独特の苗字が存在します。
そして、その苗字によってどの民族の人なのかを判別し、それによってその人の身分を認識するということになります。
つまり、カーストと苗字や名前は「=」の関係であるといえます。
以下に、それぞれのカーストやカテゴリーの中での代表的な苗字を挙げます。
- ブラーマン:ゲイシ、パンデイ、ゴータム
- チェトリ:チェトリ
- ネワール:スレスタ、ラバンタリ、カルマチャルヤ
- パニナチェルネ:カミ、タマイ、タリトゥ
ネパールのカースト制度と職業の関係
ネパールの人々は、自分が所属する階級によって職業が決められていました。
まず、第1位のタガダリは教師や神官などの頭脳を使う職業に就きます。
このタガダリという階級の中でもさらにブラーミンとクシャトリヤという階級に分けられますが、ヒンドゥー教の司祭になれるのはブラーミンだけです。
ちなみに、クシャトリヤは戦士や王など武勇を使う職業にも就いていました。
ネワールは、社長などのビジネスマンに就きます。
第2位、第3位のマトワリは、商人や農民など一般的な職業に就いていました。
日本に例えるならば、サラリーマンのようなものではないでしょうか。
第4位や第5位のパニナチャルネは、単純労働者や職人に就かされていました。
長時間労働もあったのではないかと思います。
しかし、このようなカースト制度による職業は建前のことであったといわれています。
実際にはほとんどが自給自足の農家であったそうです。
これには、子孫が増えていくにつれ、特定の職業が飽和状態になってしまったことが背景にあります。
単純に職業にも需要と供給の関係があったんではないでしょうか。
それに、パニナチャルネの職人においても今は身分関係なく技術を磨く人も増えています。
今は、靴の修理や肉屋さん、服を作る人として働いている人が多いです。
つまり、カースト制度と職業の関係は、かなり薄れつつあるといえると思いますね。
ネパールのカースト制度と恋愛・結婚の関係
ネパールでは、基本的に同じカースト同士で結婚することになります。
なぜならカーストによって色々な儀式や文化、言語まで違うこともあるので、違うカースト同士で結婚すると違いに困るからです。
カーストの階層が高くなればなるほど、このことに対して厳しい考え方を持つようになります。
高いカーストの人が違うカースト、とりわけ低いカーストと結婚するなんていうのはもっての外で、そんなことをしたら大抵親から家を追い出されます。
また、国際結婚というのも「違うカースト」にあたるわけで、私たち(日本人妻とネパール人夫)の結婚の時も、夫の親に反対されました。
ただ、夫のお母さんとお父さんは割と理解のある方達なので、反対はしたものの私たちの思いに負けて、結婚を認めてくれました。
日本だと国際結婚も珍しいものではなくなりましたが、ネパールではまだまだかなり珍しい存在ですね。
ネパールのカースト制度は廃止されないのか?
ネパールでは、1962年にカースト制度は廃止されています。
しかし、今もお互いの身分については把握している人がほとんどです。
それは決して差別的な意味ではなく、お互いの民族の生活スタイルなどを把握するためのものです。
法的には廃止されましたが、暗黙の了解で何となく人々の意識の中にあるんだと思います。
カースト制度は長く人々の価値観や考え方、行動などを拘束してきました。
そのために、法律でそれらが禁止されたからといって、いきなり変えることは難しいのではないでしょうか。
特に価値観や考え方などは親から子へと引き継がれていく部分も大きいです。
カースト制度による差別的な態度が完全になくなるには、多くの時間がかかるのかもしれません。
ネパールのカースト制度:まとめ
以上、ネパールのカーストや階級についてのお話でした。
実際は、この記事に記載したよりも複雑です。本当はもっと詳しくお伝えしたいのですが、今回ネパール人夫から情報を聞いたものの、本人もわからないという・・・
カーストは、ネパール人もわからないほどの複雑な制度なのですね^^;
日本人からしたら人々の間で階層がつくのは少し理解できないこともあるかもしれませんが、だからこそ興味深いと感じます。
不可触民と呼ばれるダリットについては、こちらをご覧ください↑
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