日本に住んでいても学校に通う子どもが身近にいないと、今の学校生活は謎だらけです。
海外の学校生活は、もっと謎です。
ネパールの学校生活は一体どんな感じでしょうか?
学校生活の現状や教育とその問題点を見ていきましょう。
ネパールの学校生活
ネパールの小学校生活は朝10時に始まり、午後4時くらいまでです。
ネパールでは金曜日が半休で土曜日が公休日ですので、学校も合わせてあります。
また、小学校から公立と私立の学校があります。
小学校の授業は、主にネパール語で行われます。
現在は、英語に重点が置かれていますので、私立の学校では、英語による授業が一般的です。
授業は中等教育修了資格試験(SLC)合格を目標に行いますので、いわゆる5教科が中心です。
国語(ネパール語)、算数(数学)、英語、社会、理科です。
公立学校では給食はなく、午後1時ころに各自が持参したおやつを食べます。
私立では給食が提供される学校もありますが、軽食程度です。
そして、掃除当番はありません。
そもそも掃除は、長い間カーストの高くない階層の仕事とされてきたので、
全員で掃除するという意識が今でもありません。
と言うか、小学校で掃除させるのなんて日本くらいじゃないでしょうか。
これに対して良いところも悪いところもあるかと思いますが、
ただ海外の人にはビックリされますよね。うちのネパール人夫もビックリしていました。
ネパールの学校・教育の現状と問題
ネパールの学校・教育の現状と問題についてご紹介します。
低学年でも進級試験があり、落第・留年・落ちこぼれが続出
ネパールの学校は、進級試験があります。
低学年でも、一定の点数を取らなければ進級できません。
ですから、初等教育在籍率135%もありの状態です。
つまり、留年、落第、落ちこぼれが続出している状態です。
実際の就学率は、初等教育の1年生から5年生までで約97%です。
留年生が時間をかけて無事に修了しても、次の前期
中等学校の就学率は約92%と5%も減少してしまいます。
前期中等学校は、6年生から8年生に該当します。
この初等教育学校から前期中等学校の8年間が義務教育です。
ネパールでは5歳になれば入学することができますが、
試験に合格しなければ義務教育期間は修了とはなりません。
一定のレベルに到達しないものは、進級させないという方針は素晴らしいのですが、
落ちこぼれをフォローする体制が整っていません。
従って、義務教育期間は5歳から25歳くらいに設定されています。
習熟度とは別に、経済的な理由で前期中等学校に進学できない子どもも多くいます。
言葉の壁はとても厳しく、時に切ない
ネパールは、多民族国家です。
民族が異なれば、言語も異なります。
言葉の壁はとても厳しいものがあります。
公用語のネパール語を学校で習うまで使わなくても、
生活していける社会で大きくなった子どもも多くいます。
小学校に入るまでに、まず母国の公用語であるネパール語を習得する必要があります。
小学校でつまずかないように、民族社会で運営される学校もあります。
このような学校では、教科書は民族の言葉で書かれたものを使用することもあります。
小学校の全過程が修了すると、学校の試験に合格して前期中等学校に進学します。
そこでは、民族の言葉を使うことなく、
ネパール語より英語に比重を置いた授業を受けなければなりません。
自分の生まれ育った国であっても言葉の壁は、時に切ないものがあります。
小学校の段階でも、この壁を超えられない子どもも少なくありません。
特に地方では学年が上がるにつれ、授業についていけなくなってしまいます。
公立と私立、都会と地方、経済力の違いは学力の格差
ネパールの公立と私立では、学校の授業の密度が全く異なります。
公立小学校ではネパール語で授業を行いますが、私立では英語で授業を行います。
小学校入学までに、日本の中学3年生程度の英語を身につける必要があります。
授業内容の違いは、他にもあります。
公立は、学校の施設にかけるお金が多くありません。
従って、理科の実験の授業はありません。
無いというよりは、できないというのが本当です。
実験室も実験器具も、試薬もありません。理科の授業も、座学だけです。
地方に行くと、学校の現状はもっと深刻です。
そもそも高学年の授業を行う学校自体がごくわずかしかありません。
毎日片道1時間を歩いて通わなければ、進級しても授業を受けられる学校が存在しません。
進級する生徒も少なく、指導できる教員も確保できないからです。
ですから、中等教育修了資格試験(SLC)の合格率は歴然と差がつきます。
都市部の私立の学校に幼稚園の頃から通った子どもでなければ、合格は不可能です。
この試験に合格しなければ、大学進学も就職もできません。
学業を続けることも資格取得の道も断たれてしまいます。
ネパール全体で中等教育進学率は6割を超えますが、
大学などの高等教育の進学率は2割以下です。
海外に進学した若者は帰らず、慢性的に指導者が不足
経済的な格差による、多くの困難についてお話してきましたが、
もう一点ネパールには重大な学校生活の問題点があります。
それは、成績優秀な若者が海外に進学して帰国しないことです。
これが、指導者の不足につながっています。
公立学校の教員は給料が安いので、ダブルワークの人も多くいます。
地方でも、都市部においても教員は休みを取って他の仕事を優先させています。
ですから、公立学校の授業は進みませんし、授業内容も私立に比べてレベルも高くありません。
お金がないから学校に通えない生徒を教える教員が、
お金のために他の仕事に行ってしまいます。
そして、専門の授業を行う教員の人手不足は慢性的です。
日本でも高校のハイレベルの指導ができる数学の先生は引っ張りだこですが、
ネパールはその比ではありません。
成績優秀者が進学先から帰って来ないのです。
もともとネパールの若者は、海外に移住希望を持っている人が多くいます。
進学以外に出稼ぎで海外にでて、そのまま帰国しないパターンもあります。
人材を育てるための人材が、慢性的に不足しています。
ネパールの学校生活・現状や教育の問題点:まとめ
一般にネパールの学校は「詰め込み式の丸暗記」といわれます。
自分の意見を発表することなく、座学のみで勉強しています。
ちょっと日本の教育と似ているような気がしますね。(今後日本の教育も変わっていくのではないかと期待していますが)
国家開発計画の一環として、教育改革に乗り出したネパール。
何十年も前から、多くの日本人がスタッフとして学校を支援し続けています。
ネパールの学校は多くの問題点を抱えていますが、それを克服するために進化し続けています。
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